昭和館は、栃木県宇都宮市塙田一丁目に位置する歴史的建造物であり、かつて第4代栃木県庁本庁舎として長く県政を担ってきた建物です。1938年(昭和13年)に竣工してから2003年(平成15年)まで、約65年間にわたり行政の中心として活用されてきましたが、その後役割を終え、内部を保存・復元したうえで2008年より展示施設「昭和館」として再び一般に公開されました。
昭和館の設計を手掛けたのは、栃木県出身の著名な建築家佐藤功一です。彼は宮城県庁舎や滋賀県庁舎の設計でも知られ、昭和館にもその作風が随所に見受けられます。建物は鉄筋コンクリート造・一部鉄骨造の地上4階・地下1階建てで、竣工当時の近代建築らしい堅牢さと格調の高さが今も保たれています。
建物の外観はルネサンス様式を基調としており、1階の人造石仕上げ、そして2~4階を縦に貫く付柱(ピラスター)が力強い印象を与えます。また、柱頭には佐藤功一のオリジナルデザインが施され、壁面にはスクラッチタイルを用いることで、古典的な意匠と近代性が見事に融合した表情を作り出しています。
内部はパルメット模様を用いて統一されており、重厚で洗練された空間が広がります。特に中心となる「正庁」は、天井の高さや装飾が美しく、もっとも格式ある部屋として表彰式などにも利用されています。
旧県庁舎は間口118m、奥行64mという大規模な建物で、上から見ると「ロの字形」をしています。南北・東西に配置された廊下が各部屋へとつながり、自然光を取り込むよう工夫されていました。3階には知事室や貴賓室があり、県政の中心としての重責を果たしていました。
西側には現在は失われた栃木県議会議事堂があり、南と西の優美な外観が特徴的でした。議事堂を中庭ではなく西側に配置したことは当時としては新しく、佐藤功一の先進的な都市設計思想を感じることができます。
行政庁舎として役割を終えた旧県庁舎は、保存が決定された一部を曳家(ひきや)工法で移動し、昭和館として保存されました。建物は約6000トンもの重量がありながら、建物ごと回転しながら数十メートル移動させるという非常に高度で大規模な工事が行われました。
旧庁舎の中でも歴史的価値の高い貴賓室・正庁・金庫室などが当時の雰囲気をそのままに保存され、現在では見学やイベント利用が可能になっています。
1階と3階の展示室では、栃木県立文書館が企画を担当しており、旧県庁舎の建設の歴史、佐藤功一の紹介、県政の変遷などが分かりやすく展示されています。企画展も定期的に実施され、伝統工芸、郷土資料、写真展など多彩な内容で訪れる人を楽しませています。
2階にあるふくしレストランは、障がいのあるスタッフが働くレストランとして親しまれており、手作りのランチやカレーなどが人気です。休憩室として誰でも利用でき、館内の憩いの場となっています。
昭和館前には、栃木県を代表する特産品である「いちご」をモチーフにしたいちご記念碑が設置され、写真スポットとして人気を集めています。
旧県庁舎は、度重なる火災を乗り越え、1938年に4代目として完成しました。戦時中は外壁を黒く塗って空襲から守られたという逸話も残っています。老朽化に伴う建て替え議論を経て、2003年に行政庁舎としての役割を終え、2008年に昭和館として新たな歴史を歩み始めました。
館内の「正庁」は今も表彰式、式典、結婚式などに利用されており、重厚で歴史ある空間が特別な場面を演出します。
昭和館は、県政の歴史や建築の魅力を学べる場所として、学生から観光客まで幅広く訪れています。宇都宮市中心部にあり、アクセスも良好なため、市内観光の立ち寄りスポットとしてもおすすめです。