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長泉寺(栃木県 上三川町)

(ちょうせんじ)

上三川の歴史と信仰を今に伝える古刹

栃木県河内郡上三川町に佇む曹洞宗 瑞龍山 長泉寺は、戦国の動乱とともに歩んできた由緒ある寺院です。町の中心部に位置し、上三川城跡や白鷺神社にもほど近いこの寺は、地域の歴史と文化、そして人々の祈りを今日まで静かに伝えてきました。

長泉寺は、永正元年(1504年)、上三川城主であった今泉但馬守守朝によって建立されました。以来五百年以上にわたり、城主今泉家の菩提寺として、また地域住民の信仰の拠り所として大切に守られてきました。

長泉寺の創建と今泉氏の歴史

鎌倉時代以降、上三川は宇都宮氏の勢力下に入り、南方防衛の要として上三川城が築かれました。初代城主は横田頼業で、その後、横田氏から今泉氏へと城主が引き継がれます。今泉氏は宇都宮氏の重臣として活躍し、戦国時代には幾多の合戦に身を投じました。

しかし慶長2年(1597年)、宇都宮家の内紛をきっかけに上三川城は落城。14代城主・今泉高光は菩提寺である長泉寺へと逃れ、従者とともに自害したと伝えられています。この出来事は、長泉寺を語る上で欠かすことのできない歴史の一頁です。

県指定文化財 木造十一面観音菩薩坐像

長泉寺の最大の見どころは、県指定文化財である木造十一面観音菩薩坐像です。像高42.6センチ、膝幅31.4センチという端正な坐像で、肩に法衣をまとい、左手に水瓶を持ち、右手で与願印を示す姿をしています。

十一面観音像は立像が一般的ですが、坐像形式は国内でも数少なく、非常に貴重な作例です。寄木造で玉眼を用い、肉身部には金泥塗り、衣文部には截金文様や漆下地に盛土彩色文が施されるなど、本格的な技法が凝縮されています。頭上の十一面の化仏も当初のままで、創建当時の姿をほぼ完全な形で今に伝えています。

長泉寺のコウヤマキ ― 五百年を生きる御神木

境内には町指定文化財のコウヤマキがそびえ立っています。この木は二本が癒着して一本のように見える珍しい姿をしており、推定樹齢は約五百年。創建当時、開山の天栄祥貞和尚が記念に植えたと伝えられています。

樹高18.1メートル、胸高周囲4.02メートルという堂々たる姿は、長い年月を経てもなお力強さを失いません。昭和57年の台風で一部が倒れたものの補強され、現在も青々とした葉を茂らせています。

今泉家累代の墓 ― 室町の面影を伝える宝篋印塔

境内には、上三川城主今泉家の累代の墓があります。墓塔は宝篋印塔で、室町時代の特徴を色濃く残す貴重な文化財です。横田氏から今泉氏へと続いた城主の歴史は、この地に深く刻まれています。

前半期の横田家累代の墓は善応寺に、後半期の今泉家累代の墓は長泉寺にあり、いずれも上三川町指定史跡となっています。

上三川城跡と城下の面影

長泉寺の周辺は、かつての上三川城の中心部にあたります。城は東西約500メートル、南北約800メートルの規模を誇る平城で、宇都宮氏の南方防衛の拠点として重要な役割を担いました。

上三川城址公園

現在、本丸跡は上三川城址公園として整備され、芝生広場や遊歩道が設けられています。高さ3~4メートルの土塁が巡り、北側には幅11メートル、深さ3メートルの堀が残っています。春には桜やツツジ、初夏にはアジサイ、秋にはモミジが彩りを添え、四季折々の景観が楽しめます。

白鷺神社と伝説

城の北辺に位置する白鷺神社には、戦国時代の伝説が残されています。白鷺の群れを敵兵と見誤った小山義政が退却したという故事に由来し、神社は「白鷺神社」と名を改めたといいます。地域の人々にとって、歴史と信仰が結びついた特別な場所です。

片目の魚・片目の泥鰌伝説

落城の悲劇にまつわる「片目の魚」「片目の泥鰌」の伝説も語り継がれています。今泉高光の娘・勝姫が堀に身を投げ、その因縁で堀の魚が片目になったという物語は、民俗学者柳田國男も紹介したことで知られています。これらの伝承は、歴史的事実と民間信仰が交差する興味深い文化遺産といえるでしょう。

四季を彩る花の寺

長泉寺は「花の寺」としても親しまれています。春には梅、桜、ツツジ、ボタン、シャクヤクが咲き誇り、夏には紫陽花が境内を彩ります。秋には紅葉が美しく、訪れる人々の心を和ませます。

静寂の中で花々を眺めながら歴史に思いを馳せるひとときは、日常の喧騒を忘れさせてくれる特別な時間となるでしょう。

普門寺・勝姫稲荷神社

周辺には普門寺や勝姫稲荷神社もあり、城とともに歩んだ歴史を感じることができます。特に勝姫稲荷神社は、落城伝説と結びついた信仰の場として知られています。

アクセス情報

所在地:栃木県河内郡上三川町しらさぎ1丁目51-7
電車・バス:JR宇都宮線石橋駅から関東バス真岡行きで「上三川車庫」下車、徒歩約15分。

歴史と自然が調和する観光地

長泉寺と上三川城跡は、戦国の記憶と四季の自然が融合した魅力あふれる観光地です。五百年の時を越えて立つコウヤマキ、静かに祈りを受け止める十一面観音、そして城跡に広がる緑豊かな公園。そこには、地域の誇りと歴史の重みが息づいています。

上三川町を訪れた際には、ぜひ長泉寺を中心に城跡や神社を巡り、歴史散策を楽しんでみてはいかがでしょうか。静かな境内で過ごすひとときは、きっと心に深く残ることでしょう。

Information

名称
長泉寺(栃木県 上三川町)
(ちょうせんじ)

宇都宮

栃木県