旧篠原家住宅は、栃木県宇都宮市今泉一丁目に位置する、明治時代に建てられた歴史的建造物です。かつて醤油醸造と肥料商を営み、宇都宮を代表する豪商として知られた篠原家の住居兼店舗として使用された建物で、現在は国の重要文化財および宇都宮市指定有形文化財として保存されています。
明治時代の豪商の暮らしや商いの様子を今に伝える希少な建築物であり、JR宇都宮駅から徒歩わずか5分という好立地にありながら、近代の風情を鮮やかに残しています。黒漆喰による外壁、大谷石を用いた重厚な外観、そして商家建築ならではの格子が特徴で、宇都宮駅前の歴史的シンボルとして親しまれています。
篠原家は、下野国河内郡宿郷村(現在の宇都宮市宿郷)にあった本家の三男によって、江戸時代末期に現在の今泉の地で創業されました。屋号は「堺屋」、家紋は「丸に横木斛(よこぎます)」とされ、醤油醸造業を中心に商いを広げました。
明治時代に入ると醤油醸造に加えて肥料商にも事業を拡大し、さらに太平洋戦争後には倉庫業を手がけるなど、多方面で宇都宮の発展を支えた有力商家でした。1924年(大正13年)には田畑約110ヘクタール、小作人150人を抱えるほどの規模となり、その繁栄ぶりがうかがえます。
1945年(昭和20年)7月12日の宇都宮空襲では、周辺一帯の建造物が焼失しましたが、旧篠原家住宅の主屋と石蔵3棟のみが奇跡的に残りました。戦後すぐには、兵隊が店の前で炊き出しを行い、市民におにぎりを配布したという記録も残っており、地域の人々にとっても心の支えとなる場所だったことがわかります。
ただし、醤油醸造蔵や米蔵など多くの附属建物はこの空襲で失われており、現存する建物はその貴重さから、後に文化財として指定されることになりました。
1895年(明治28年)に建てられた主屋は、商家と住居を兼ねた土蔵造りの建築で、1階・2階合わせて約100坪という壮大な規模を誇ります。外壁は黒漆喰で塗られ、1階部分は大谷石貼りで仕上げられており、宇都宮地域らしい素材が活かされています。
切妻造・桟瓦葺の屋根、重厚な漆喰の壁、そして商売を象徴する格子の店構えなど、明治期の豪商住宅の特徴が凝縮されています。装飾性は控えめながら、建築部材には良質な木材がふんだんに使われており、当時の財力が感じられます。
建築面積:172.2m² 建築形式:土蔵造2階建、切妻造平入、桟瓦葺 建築時期:1895年(明治28年)
開館時には観光ボランティアガイドが常駐しており、建物の歴史や特徴について丁寧な解説を受けることができます。
主屋と同じく1895年に建てられた新蔵は、黒漆喰の外壁と大谷石貼りの1階外壁が特長です。主に商売に関わる道具や貴重品を保管するための蔵として機能していました。
建築面積:19.9m² 建築形式:土蔵造2階建、切妻造、桟瓦葺
1851年(嘉永4年)建立の文庫蔵は、篠原家に伝わる生活用具、衣類、美術品、書画などを保管していたとされる蔵です。平成14〜15年にかけて解体修理が行われ、往時の姿を丁寧に復元しています。
文庫蔵と同時期に建てられたとされる石蔵は、醤油醸造に使用する道具類を収納していた蔵です。大谷石を活用した堅牢な造りが特徴で、当時の醸造業の規模を物語ります。
旧篠原家住宅は、1995年に宇都宮市指定文化財に登録され、翌1996年に宇都宮市へと寄贈されました。1997年から一般公開が始まり、訪れる人々に宇都宮の歴史と商家文化の魅力を伝えています。
主な沿革は次の通りです。
1851年:文庫蔵・石蔵建立 1895年:主屋・新蔵建立 1995年:宇都宮市指定文化財に指定 1997年:一般公開開始 2000年:主屋・新蔵が国指定重要文化財となる 2003年:うつのみや百景に選定
旧篠原家住宅は、JR宇都宮駅から徒歩5分ほどの場所にあり、観光の合間に気軽に立ち寄れるスポットです。
徒歩: JR宇都宮駅西口から約5分(約300m)東武宇都宮駅東口から約20分