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塩原渓谷歩道 回顧コース

(しおばら けいこく ほどう みかえり)

那須塩原市塩原に広がる塩原渓谷歩道は、箒川(ほうきがわ)沿いに全長約12kmにわたって続く自然遊歩道です。その中でも「回顧(みかえり)コース」は、急な登り下りを含む健脚向けの本格的なハイキングコースとして知られています。渓谷のダイナミックな地形や、吊橋からの絶景、名瀑の数々を巡るこのコースは、まさに塩原の大自然を体感できる代表的なルートです。

行程は約3.3km、所要時間は片道約120分。猿岩駐車場西側または蟇石(がまいし)園地側を起点に歩くことができ、急斜面や石段が続くため、登山気分を味わいながら歩くことができます。一方で、体力に不安のある方は、蟇石園地から回顧の吊橋周辺のみを散策するなど、見どころを絞った楽しみ方も可能です。

コース前半:留春の滝と深い渓谷美

猿岩駐車場から渓谷へ

猿岩駐車場から歩道へ入ると、国道400号のはるか下を流れる箒川支流へと一気に下っていきます。巨石が点在し、青く澄んだ淵が口を開けるように広がる渓谷の景色は、歩き始めて間もなく訪れる圧巻の風景です。渓流のせせらぎと森の香りに包まれながら進む時間は、日常を忘れさせてくれます。

留春(りゅうしゅん)の吊橋と留春の滝

やがて現れるのが、全長約20mの留春の吊橋です。吊橋の上からは、切り立った岩壁と清流が織りなす渓谷美を一望できます。四季折々に表情を変える風景はどの季節も美しく、特に新緑や紅葉の時期は格別です。

橋の近くにある留春の滝は、約15mの岩肌をやわらかく流れ落ちる、優美な滝です。かつては冬の約3か月間、水が涸れ、晩春になると再び流れ始めたことから「春を留める滝」としてこの名が付けられました。現在は年間を通して水流がありますが、その控えめで繊細な流れは、今もなお春の気配を感じさせます。

急登を越えて展望台へ

モミの大木と石段の急斜面

留春の滝を過ぎると、坂道を登り、やがて沢に出ます。そこからはモミの大木が立ち並ぶ森の中、石段の急斜面が続きます。息を整えながら登るこの区間は、回顧コース最大の難所ともいえる場所ですが、森の静寂と木々の生命力に包まれながら歩く時間は格別です。

登り切った地点から振り返ると、大網地区を眼下に望む壮大な景色が広がります。「みかえり」という名の由来を思わせるような、思わず振り返りたくなる絶景です。

ツツジ咲く尾根と最高地点の展望台

さらに進むと、アカヤシオやシロヤシオが群生する尾根に出ます。特に4月中旬頃には、淡い紅色や白色のツツジが一斉に咲き誇り、山肌を華やかに彩ります。この尾根はコースのほぼ中間地点であり、同時に標高が最も高い場所でもあります。

展望台からは大網地区や周囲の山並みを一望でき、休憩をとるのに最適なスポットです。風を感じながら景色を眺めるひとときは、登りの疲れを忘れさせてくれます。

コース後半:原生林と名瀑・回顧の滝

カラマツ林とアスナロの森

展望台を過ぎると、歩道は徐々に下り坂へと変わります。カラマツの植林地を抜け、やがてアスナロやモミの大木が立ち並ぶ原生林の尾根筋を下ります。森の中を歩くこの区間では、木漏れ日と静かな空気が心を落ち着かせてくれます。

途中には「回顧の滝」や「塩原ダム」を遠望できる場所もあり、渓谷の奥深さを実感できます。

回顧の吊橋と回顧の滝

コースの終盤を飾るのが、全長100m・高さ約30mの回顧の吊橋です。昭和62年(1987年)に完成したこの吊橋は、塩原に数ある吊橋の中でも特に迫力のある存在です。橋上からは箒川の渓谷と、遠くにもみじ谷大吊橋を望むことができます。

吊橋を渡ると、観瀑台から落差約55mの回顧の滝を眺めることができます。水晶のすだれのように流れ落ちるその姿は圧巻で、「塩原十名瀑」のひとつにも数えられています。文豪・尾崎紅葉の『金色夜叉』にも登場し、「回顧橋は三十余丈の飛瀑を踏みて、山中の景は始めて奇なり」と記された名瀑です。

「みかえり」とは“振り返る”という意味。旅人が渓谷を去る際、あまりの美しさに何度も振り返ったことから名付けられたと伝えられています。その名のとおり、心に深く刻まれる風景が広がります。

大網地区と温泉の歴史

回顧コースの周辺に位置する大網地区は、平安時代から温泉が湧き出していたとされる由緒ある地です。川沿いには約300段の階段を下りた先に、岩間から湧き出る野趣あふれる露天風呂があります。泉質の良さは折り紙付きで、塩原で飲泉第1号として認められた温泉でもあります。

川を遡上してきた魚が滝に阻まれ、大網を仕掛けたように多く捕れたことから「大網」という地名が付いたと伝えられています。自然とともに生きてきた歴史を感じられる地域です。

塩原渓谷歩道全体の楽しみ方

塩原渓谷歩道は、回顧コースとやしおコースを合わせて約8.5km。吊橋や滝、展望台、足湯など見どころが豊富に点在しています。短い区間であれば約40分ほどの散策も可能で、体力や時間に応じて自由に計画できます。

春はアカヤシオやヤマツツジ、夏は深緑、秋は紅葉、冬は静寂と氷瀑と、四季それぞれに違った表情を見せる塩原の渓谷。森林浴を楽しみながら、自然の息吹を全身で感じられる場所です。

アクセス情報

猿岩駐車場西側起点:関東バス「塩原大網」下車、徒歩約8分(約500m)
蟇石園地回顧橋東側起点:関東バス「回顧橋」下車すぐ

自然豊かな塩原で、最も誇るべき大自然を体感できる回顧コース。登山気分を味わいながら、名瀑と吊橋、そして深い森の静けさをぜひご堪能ください。

Information

名称
塩原渓谷歩道 回顧コース
(しおばら けいこく ほどう みかえり)

那須・塩原

栃木県