いろは坂は、栃木県日光市の馬返から中禅寺湖畔を結ぶ国道120号の山岳道路で、日光市街と奥日光を結ぶ重要な観光ルートとして知られています。下り専用の第一いろは坂と、上り専用の第二いろは坂の二つで構成されており、両者を合わせると48か所もの急カーブが連続する、日本を代表する絶景ドライブコースです。その独特な構造と景観美から、「日本の道100選」にも選ばれています。
いろは坂という名称は、かつて存在した48か所のヘアピンカーブを、日本語の基本である「いろは四十八音」に例えたことに由来します。現在も各カーブには「い」「ろ」「は」…と文字が記された標識が設置されており、走行しながら数えていくのも楽しみのひとつです。第二いろは坂には「い」から「ね」までの20カーブ、第一いろは坂には「な」から「ん」までの28カーブがあり、合計で48の文字がそろっています。
第一いろは坂は、中禅寺湖方面から日光市街へ下るための一方通行道路です。ほぼ1車線の道幅で、急カーブが連続するため慎重な運転が求められます。下り坂ならではのスリルとともに、樹間から見える渓谷や山々の景色が印象的で、特に秋の紅葉シーズンには色鮮やかな景観が広がります。
第二いろは坂は、馬返から中禅寺湖へ向かう上り専用道路で、比較的道幅が広く、走行しやすいのが特徴です。途中には黒髪平と明智平という2か所の駐車場兼休憩スポットがあり、特に明智平は多くの観光客が立ち寄る名所となっています。
第二いろは坂の途中にある明智平展望台は、いろは坂観光のハイライトともいえる絶景スポットです。ここからは、第一いろは坂の全景をはじめ、華厳渓谷や中禅寺湖、男体山の雄姿を一望できます。さらに、明智平ロープウェイを利用すれば、より高い位置から華厳滝と中禅寺湖を見下ろすことができ、四季を通じて多くの観光客を魅了しています。
いろは坂は、季節ごとに異なる美しさを楽しめる点も大きな魅力です。春には新緑が芽吹き、山肌がやさしい緑に包まれます。夏は涼やかな高原の空気と深い緑が心地よく、避暑を兼ねたドライブに最適です。そして秋には、日光随一とも称される紅葉が見頃を迎え、山全体が赤や黄に染まります。この時期はいろは坂周辺が特に混雑し、通常20分ほどで走行できる区間が、2~6時間以上かかることもあるため、時間に余裕をもった計画が必要です。
奥日光の紅葉は、標高差によって長期間楽しめるのが特徴です。いろは坂の見頃は10月中旬から下旬にかけてで、中禅寺湖や華厳滝とあわせて訪れることで、より充実した紅葉狩りが楽しめます。ただし、この時期は大変な渋滞が発生するため、早朝の出発や公共交通機関の利用も検討すると安心です。
いろは坂の起源は、奈良時代に日光開山の祖・勝道上人に従った修験者たちが開いた山道にさかのぼります。当時、奥日光は二荒山神社の聖域とされ、明治初期まで女人禁制・牛馬禁制の地でした。その名残は「馬返」という地名や、第一いろは坂途中に残る「女人堂」に今も見ることができます。
明治以降、奥日光が避暑地として注目されるようになると、道路整備が進められ、現在のいろは坂の原型が形成されました。1954年には日本で2番目となる有料道路として全面改修され、戦後の観光発展を支える重要なインフラとなります。その後、交通量の増加に対応するため、1965年に第二いろは坂が開通し、上り・下りを完全に分離した一方通行道路となりました。1984年には無料開放され、より多くの観光客が訪れるようになりました。
現在のいろは坂は、全長約15.8キロメートル、高低差約440メートルを誇る、日本屈指の山岳観光道路です。2020年には、土木技術と観光史の両面から評価され、土木学会選奨土木遺産にも選ばれました。2023年にはカーブ標識のリニューアルやメロディーロードの設置など、新たな魅力づくりも進められています。
いろは坂は景観が美しい一方で、急カーブと勾配が続く道路です。特に雨天や冬季は路面状況に注意が必要です。また、沿線では野生のニホンザルが出没することがあり、日光市では餌付け禁止条例が施行されています。自然と共存する観光地として、マナーを守った利用が求められます。
いろは坂は単なる移動路ではなく、奥日光観光そのものを象徴する存在です。中禅寺湖、華厳滝、戦場ヶ原などの名所へと続く道中で、四季折々の自然と歴史を体感できます。日光を訪れる際には、ぜひいろは坂をゆっくりと走り、その魅力を存分に味わってみてはいかがでしょうか。
無料
電車・バス:JR日光線日光駅・東武日光線 東武日光駅から東武バス中禅寺温泉行きまたは湯元温泉行きで約25分
車:日光宇都宮道路 清滝ICから約15分