那須烏山市は、栃木県の東部に位置する自然と歴史、文化が調和したまちです。県都・宇都宮市から北東へおよそ30~35kmの距離にあり、JR烏山線を利用すれば約1時間ほどでアクセスできます。市域は、八溝山地の西麓から那珂川中流域にかけて広がり、清らかな川と穏やかな丘陵、そして人々の暮らしが織りなす美しい風景が特徴です。
中世には烏山城の城下町として発展し、江戸時代には烏山藩の政治・文化の中心として栄えました。現在も市内各地に城跡や寺社、伝統行事が残り、長い歴史の積み重ねを身近に感じることができます。また、市域の多くが那珂川県立自然公園に含まれ、豊かな自然環境と多彩な観光資源に恵まれています。
那須烏山市は、栃木県中東部に位置し、西は高根沢町、北はさくら市・那珂川町、南は市貝町・茂木町、東は茨城県常陸大宮市と接しています。地勢は、八溝山系に連なる丘陵地と、那珂川が形成する河岸段丘が広がる変化に富んだ地形です。
市内には那珂川をはじめ、支流の荒川や江川が流れ、向田地区で那珂川に合流しています。これらの河川は、古くから人々の生活を支えるとともに、文化や産業を育んできました。那珂川右岸には市街地が形成され、左岸には山間部が広がり、四季折々の自然景観を楽しむことができます。
交通面では、国道293号と国道294号が市内を東西・南北に貫き、栃木県東部の交通の要所となっています。さらに、高速道路のインターチェンジへも比較的アクセスが良く、東北自動車道や北関東自動車道、常磐自動車道を利用した広域観光の拠点としても便利な立地です。
「烏山」という地名には、古くから語り継がれる伝説があります。応永年間、沢村五郎資重が城を築く場所を探していた際、一羽の烏が金の幣束をくわえて飛来し、那珂川西側の山頂に落としたと伝えられています。これを熊野権現のお告げと受け取った資重は、その地に城を築き、烏山城と名付けました。
また、史料『那須記』によれば、もともとこの地域は「坂主」「酒主」と表記されていましたが、那珂川沿岸の丘陵に多くの鳥が棲んでいたことから「烏山」と呼ばれるようになったともいわれています。こうした伝承は、自然と人々の信仰が深く結びついていたことを今に伝えています。
那須烏山市の気候は、ケッペンの気候区分では温暖湿潤気候(Cfa)に属します。年平均気温は約13℃で、夏は比較的暑く、冬は冷え込みが厳しい日もあります。近年には氷点下10℃を下回る厳寒が観測されることもあり、内陸性の気候の特徴が見られます。
一方で、年間を通じて降水量と日照時間のバランスが良く、春の桜、夏の新緑、秋の紅葉、冬の澄んだ空気と雪景色など、四季折々の自然美を楽しむことができます。特に、早朝に見られる国見の雲海は、市を代表する絶景の一つとして知られています。
那須烏山市の歴史は、鎌倉時代にさかのぼります。建保年間(13世紀初頭)には、那須氏が越前国から紙漉き職人を招き、程村紙(烏山和紙)を創製しました。この和紙は、厚手で丈夫、美しい風合いを持つことから高く評価され、現在も卒業証書などに使用されています。
応永25年(1418年)には、沢村五郎資重が寿亀山に烏山城を築き、城下町としての基礎が築かれました。戦国時代から江戸時代にかけては、成田氏や大久保氏などが城主を務め、烏山藩として地域を治めました。
また、永禄3年(1560年)に疫病退散を祈願して始まった山あげ祭は、450年以上の歴史を誇る伝統行事として現在まで受け継がれ、国の重要無形民俗文化財に指定されています。
明治時代の廃藩置県を経て、地域は近代化の道を歩みました。昭和61年には那珂川の洪水により大きな被害を受けましたが、その経験を糧に治水やまちづくりが進められてきました。
平成17年(2005年)には、旧烏山町と南那須町が合併し、現在の那須烏山市が誕生しました。以降、自然と共生しながら歴史文化を活かした観光振興や地域づくりが進められています。
市内有数の景勝地である龍門の滝は、江川にかかる高さ約20m、幅約65mの大滝です。大蛇が棲んでいたという伝説から名付けられ、初夏の新緑や秋の紅葉の時期には特に多くの観光客が訪れます。JR烏山線・滝駅から徒歩約5分とアクセスも良好です。
山あげ会館では、日本一の野外歌舞伎舞台と称される山あげ祭の魅力を、映像や実物展示、ミニチュア模型などで分かりやすく紹介しています。語り部ロボットによる解説も人気で、祭りの迫力と歴史を一年中体感できます。
大正時代の擬洋風建築を活用した烏山和紙会館では、1200年の伝統を誇る手すき和紙の歴史や製作工程を学ぶことができます。館内では和紙製品の展示・販売も行われ、職人の技と美意識に触れることができます。
国指定史跡である烏山城跡は、複郭式の山城として知られ、石垣や空堀、土塁などが良好な状態で残されています。城跡を歩けば、往時の城下町の姿を想像しながら、歴史散策を楽しむことができます。
第二次世界大戦末期に掘られた地下工場跡を活用したどうくつ酒蔵は、ひんやりとした洞窟内で日本酒を熟成させるユニークな施設です。歴史と産業遺産、そして酒文化が融合した観光スポットとして注目されています。
那須烏山市では、山あげ祭をはじめ、「大金いかんべ祭」など季節ごとの祭りや催しが行われています。これらの行事は、地域の人々の結束を深めるとともに、訪れる人々に温かな交流と感動をもたらします。
市の中央を流れる那珂川は、自然景観だけでなく、人々の暮らしや文化の源でもあります。カヌーやキャンプといったアウトドア活動、環境保全活動、川の駅を拠点とした交流など、那珂川を軸にしたまちづくりが進められています。
那須烏山市は、豊かな自然、深い歴史、そして人々の暮らしが調和した魅力あふれるまちです。訪れるたびに新たな発見があり、何度でも足を運びたくなる奥深い観光地といえるでしょう。