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いわむらかずお絵本の丘美術館

(Iwamura Kazuo Ehon-no-Oka Art Museum)

絵本と里山が響き合う場所

いわむらかずお絵本の丘美術館は、世界的な絵本作家・いわむらかずおの作品世界と、その原点である里山の自然を同時に体験できる美術館です。栃木県那珂川町、那須の清流・那珂川を見下ろす穏やかな丘の上に位置し、1998年4月に開館しました。この場所は作者自身によって「えほんの丘」と名付けられ、物語が生まれ、育まれていく特別な空間として大切に守られています。

丘の上に広がる、心を癒す絵本の世界

この美術館では、いわむらかずお氏の代表作である「14ひきのシリーズ」をはじめとした絵本原画を中心に、構想段階のスケッチや下絵、さらには海外で翻訳・出版された絵本など、幅広い資料が展示されています。作品を通して、自然と共に生きる喜びや、家族・仲間との温かな関係が丁寧に描かれており、来館者はその優しい世界観に自然と引き込まれていきます。

展示は単に作品を鑑賞するだけでなく、絵本がどのように生まれ、どのような思いが込められているのかを感じ取れる構成となっています。そのため、子どもにとっては物語の世界に入り込む体験となり、大人にとっては懐かしさや人生を振り返るひとときとなるでしょう。

世界に広がる「いわむらワールド」

いわむらかずお氏の作品は、日本国内にとどまらず、ヨーロッパ、アメリカ、アジアなど13か国以上で翻訳出版され、世界中の子どもたちに親しまれています。自然をテーマにした素朴で温かな作風は、国や文化の違いを越えて多くの共感を集めてきました。

美術館では、こうした海外版絵本の展示も行われており、同じ物語が異なる言語や装丁で表現されている様子を見ることができます。これは、絵本が持つ普遍的な魅力を改めて感じさせてくれる貴重な体験です。

里山の自然とともに楽しむ美術館

美術館の周囲には、雑木林や野生植物が広がり、鳥や小動物など、さまざまな生きものが暮らしています。敷地内には「絵本の丘農場」と呼ばれるエリアもあり、まるで絵本の中に入り込んだかのような風景が残されています。四季折々に変化する自然の表情は、何度訪れても新たな発見をもたらしてくれます。

春には草花が芽吹き、夏には緑が濃く、秋には木々が色づき、冬には静かな里山の姿が広がります。こうした自然環境そのものが、いわむらかずお氏の作品世界を形づくる大切な要素となっており、美術館の大きな魅力の一つです。

館内施設のご案内

展示室・ホール

館内には複数の展示室が設けられ、絵本や自然をテーマとした企画展示が行われます。また、小さなホールでは絵本の朗読会やおはなし会、ミニコンサートなどのイベントも開催され、訪れるたびに新しい楽しみがあります。

ミュージアムショップ

ミュージアムショップでは、いわむらかずお氏の絵本をはじめ、えはがきやレターセット、マグネット、バッチ、Tシャツ、布バッグ、複製画、カレンダーなど、ここでしか手に入らないグッズも数多く販売されています。旅の思い出や贈り物としても人気です。

ティールーム

館内のティールームでは、手作りのスコーンやケーキを味わいながら、ゆったりとした時間を過ごすことができます。コーヒーや紅茶、国産果汁100%のジュースなど、素材にこだわったメニューが揃い、自然を眺めながらのひとときは格別です。

誰もが安心して楽しめるやさしい美術館

いわむらかずお絵本の丘美術館はハートビル認定建築物であり、車イスやベビーカーでも安心して利用できるバリアフリー設計が施されています。車イス用駐車スペースや多目的トイレ、あかちゃん用のおむつ替え台、子ども用トイレも完備されており、家族連れにも配慮された施設です。

建築と環境への配慮

美術館の建物は、自然との調和を大切にした木造建築で、OMソーラーシステムを導入しています。太陽熱を利用して室内を暖めると同時に、新鮮な外気を取り入れる換気効果もあり、快適で環境にやさしい空間が保たれています。

この建築は高く評価され、栃木県マロニエ建築賞をはじめ、日本建築家協会による環境建築賞最優秀賞やJIA25年賞など、数多くの賞を受賞しています。

いわむらかずおの人生と絵本の原風景

いわむらかずお(本名:岩村 和朗)は、1939年4月3日、東京都足立区に生まれました。6人兄弟の中で育ち、幼少期には戦争の影響により秋田県の祖父母の家へ疎開し、豊かな自然に囲まれた暮らしを経験します。この時に触れた里山の風景や、生き物たちとの日常が、のちの創作活動における大切な原点となりました。

戦後は東京に戻り、決して恵まれているとは言えない生活環境の中で家族と助け合いながら成長します。自然と共に生きること、家族や仲間と力を合わせることの尊さは、彼の絵本に一貫して流れるテーマとなっていきました。

美術と絵本作家への道

1958年に東京都立西高等学校を卒業後、東京芸術大学美術学部工芸科に進学し、1964年に卒業します。卒業後はいったん社会人として働きますが、絵を描くことへの思いを捨てることはなく、1970年に『ぷくぷくの絵本』で絵本作家としてデビューしました。

1975年、36歳のときに栃木県益子町へ移住し、畑を耕しながら創作を続ける生活を選びます。自然の中で暮らし、季節の移ろいや生き物の営みを日々観察する生活は、作品に温もりと説得力を与えました。

「14ひきのシリーズ」と世界への広がり

1983年に刊行された『14ひきのひっこし』『14ひきのあさごはん』を皮切りに始まった「14ひきのシリーズ」は、三世代14匹のねずみ家族が自然の中で協力し合いながら暮らす様子を、細密であたたかな絵で描いた代表作です。シリーズ累計発行部数は800万部を超え、作品は13か国以上で翻訳出版され、世界中の子どもたちに親しまれています。

そのほかにも「かんがえるカエルくん」シリーズなど、子どもたちが自ら考える力を育む作品を数多く発表し、絵本を通して哲学的な問いをやさしく伝え続けました。

絵本の丘美術館の誕生

1998年、いわむらかずおは自身の創作世界を形にする場として、那珂川町の里山にいわむらかずお絵本の丘美術館を開設しました。館内では、代表作の原画をはじめ、構想段階のスケッチや海外版絵本などを展示し、絵本が生まれる過程を丁寧に紹介しています。

また、朗読会やミニコンサートなどの催しも行われ、訪れる人々が物語の世界により深く触れられる工夫がなされています。美術館の周囲には雑木林や草花が広がり、野鳥や昆虫など多くの生き物が暮らしており、まるで絵本の中に入り込んだかのような体験ができます。

今も続く物語の丘

いわむらかずおは2024年12月19日に85歳で生涯を閉じましたが、その思想と作品は、絵本の丘美術館に今も息づいています。四季折々の風景の中で絵本を楽しみ、里山に暮らす生き物たちと出会い、子どもたちの笑顔が響くこの場所は、これからも新しい物語を生み続けることでしょう。

Information

名称
いわむらかずお絵本の丘美術館
(Iwamura Kazuo Ehon-no-Oka Art Museum)

那須烏山・那珂川

栃木県