渡良瀬橋は、栃木県足利市のほぼ中央を流れる渡良瀬川に架かる歴史ある橋で、市民の暮らしと深く結びついてきた重要な交通インフラです。全長243.27メートル、幅員5.5メートルを誇る下路平行弦ワーレントラス橋で、1934年(昭和9年)に完成しました。現在では、歌と風景の両面から全国的に知られる足利市屈指の観光名所となっています。
渡良瀬橋が広く知られるきっかけとなったのが、歌手森高千里さんが発表した楽曲『渡良瀬橋』です。夕暮れ時の橋と渡良瀬川を情感豊かに描いたこの曲は大ヒットし、橋の存在は一躍全国区となりました。現在では、橋の北側たもとに「渡良瀬橋 歌碑」が設置され、ボタンを押すと実際に楽曲が流れる仕掛けもあり、多くのファンや観光客が訪れています。
渡良瀬川は、足利市を南北に分ける母なる川として、古くから人々の生活と密接に関わってきました。足尾の山々を源流とし、桐生・足利・佐野を経て利根川へと注ぐこの川は、かつて水上交通の要衝として経済活動を支えていました。一方で、流路の変遷や氾濫を繰り返したことから「暴れ川」としても知られ、橋を架けることは長らく困難でした。
江戸時代には渡し船が利用されていましたが、明治35年(1902年)に初めて木造の渡良瀬橋が架けられました。その後、大正6年(1917年)に改修を経て、現在の橋は昭和9年、陸軍特別大演習に対応するために急遽建設されたものです。工事はわずか半年で行われ、総工費は約9万7千円。当時としては最新鋭の鋼製ワーレントラス橋が採用されました。
この橋は、渡良瀬川に架かる現存の永久橋としては最古級とされ、80年以上にわたり足利市民の生活を支え続けています。
1992年以前、渡良瀬橋は地元では親しみを込めて「鉄橋」と呼ばれており、観光的な注目はほとんど集めていませんでした。しかし、森高千里さんの楽曲発表を機に注目度が急上昇。外観の再塗装や夜間のライトアップが施され、現在では夕日とトラス橋が織りなす美しいシルエットを楽しめる名所へと生まれ変わりました。
実際の渡良瀬橋は車両専用で、歩行者や自転車は通行できませんが、西側には歩行者・自転車専用橋が並行して架けられています。ここから望む夕暮れの渡良瀬川と橋の景色は、歌詞の世界そのままと評され、多くの写真愛好家や観光客を魅了しています。
橋名の読み方について、道路管理者である栃木県は「わたらせばし」としていますが、橋名板には「わたらせはし」と記されています。濁音を避けた表記には、川が清く穏やかに流れることへの願いや、洪水を連想させる濁りを忌避した先人たちの思いが込められているとされています。
渡良瀬橋は、東武伊勢崎線足利市駅から徒歩約15分、JR両毛線足利駅から徒歩約20分と、公共交通でのアクセスも良好です。周辺には中橋や田中橋など、渡良瀬川に架かる他の橋も点在し、散策しながら足利の歴史と風景を楽しむことができます。
渡良瀬橋は、単なる交通施設ではなく、歴史、土木技術、音楽文化が重なり合った足利市の象徴的存在です。昼間の力強い姿、夕暮れの叙情的な風景、そして歌に込められた郷愁を感じながら訪れることで、足利という街の魅力をより深く味わうことができるでしょう。