鮒の甘露煮は、栃木県、とりわけ県南地方で古くから親しまれてきた郷土の味です。12月になると、沼や堀の水を抜く「かい掘り」が行われ、なまずやこい、うなぎなどとともに鮒がとれます。中でも冬の「寒ぶな」は脂がのって美味とされ、正月用の甘露煮や昆布巻きに用いられてきました。お頭つきのまま供される鮒は、縁起物として新年の食卓に欠かせない存在です。
栃木市藤岡地域は、渡良瀬川をはじめとする河川が合流し、数多くの沼が点在する自然豊かな土地です。江戸時代より川魚の宝庫として知られ、良質な鮒の産地として名を馳せてきました。現在も伝統的な製法を受け継ぎながら甘露煮が作られ、地域を代表する名産品として多くの人々に親しまれています。
甘露煮は、醤油やみりんに砂糖や水飴を加えた甘辛い煮汁で、魚をじっくりと煮込む料理です。鮒をはじめ、アユやコイなどの淡水魚が使われ、骨までやわらかくなるよう時間をかけて仕上げます。照りよく艶やかに煮上げられた姿は美しく、保存性にも優れています。土地の風土と歴史が育んだ鮒の甘露煮は、観光で訪れた際にもぜひ味わっていただきたい伝統の逸品です。